元榮氏のキャリアにおいて最大の転換点の一つが、参議院議員としての政治活動と、その後のスパッとした退任劇です。2016年の第24回参議院議員通常選挙において、自由民主党公認で千葉県選挙区から出馬し、見事に初当選。財務大臣政務官などを歴任し、デジタル庁創設や押印廃止(脱ハンコ)政策の議論を現場からリードしました。
当時、上場企業の創業社長が国会議員を務める例は極めて珍しく、「利益誘導ではないか」「二足の草鞋は履けるのか」といった批判的な視線も向けられました。これに対し元榮氏は、議員就任に伴い弁護士ドットコムの代表取締役を一旦退任し、取締役会長として報酬を受け取らない形でガバナンス体制を整理。身の処し方を明確にした上で政策提言に打ち込みました。
しかし、2026年の第26回参議院選挙を前に、元榮氏は不出馬(政界退任)を電撃表明します。この「退任の理由」について、当時は様々な憶測が飛び交いました。「選挙情勢の不安か」「党内力学の摩擦か」といった声もありましたが、本人が記者会見や各種ビジネス誌のロングインタビューで語った真意は極めて合理的でした。
「政治のスピード感と、民間テクノロジーが世界を変えるスピード感には大きな乖離がある。官主導で制度の枠組みを作ることには一定の貢献ができたが、Web3や生成AI、SaaSによる社会実装の現場に戻り、起業家として日本経済のDXを推進することこそが自身の天命である」
任期満了に伴い政界を離れた元榮氏は、2026年秋に弁護士ドットコム代表取締役社長へと再登板。この迅速な引き際と事業現場への回帰は、政治にしがみつかない現代的な経営者像として、かえってビジネス界からの評価を高める結果となりました。