物語を恐怖の頂点へと押し上げるキーパーソンが、マンダレイの家政婦長ダンヴァース夫人である。彼女のレベッカに対する執着は、単なる主従関係を超えた歪んだ崇拝であり、時には官能的な匂いすら漂わせる。後妻を精神的に追い詰め、窓から飛び降りさせようとする凄惨なシーンは、本作がただのゴシック・ロマンスにとどまらず、洗練されたサイコスリラーであることを証明している。
旧版・リメイク版のいずれにおいても、ダンヴァース夫人はマンダレイの「過去の亡霊」を体現する存在として圧倒的な異彩を放つ。彼女が放つ冷徹な眼光と、亡き主人の部屋を完璧に保ち続ける情念は、館全体を巨大な墓標へと変貌させるのだ。