私たちが普段使っている10進法は、両手の指が10本あることから直感的に扱いやすい記数法です。しかし、分配や分割という「実生活の作業」に目を向けた途端、10という数値は極めて不便な側面を露呈します。10の約数は「1、2、5、10」のわずか4つしかありません。つまり、10個のパンを3人や4人で等分しようとすると、必ず端数(割り切れない分数や循環小数)が発生します。
一方、60という数値が持つ最大の強みは約数の多さとメリットに集約されます。60の約数は、以下の通り実に12個も存在します。
【60の約数一覧】:1、2、3、4、5、6、10、12、15、20、30、60
この性質により、日々の生活で生じるあらゆる分割がスムーズに完結します。
- 半分(1/2)= 30分
- 3等分(1/3)= 20分
- 4等分(1/4)= 15分(クォーター)
- 5等分(1/5)= 12分
- 6等分(1/6)= 10分
紀元前の市場で行われた穀物の配給や、労働時間の割り当てにおいて、「綺麗に割り切れる」ことは争いを防ぐための決定的な知恵でした。時計の文字盤を思い浮かべれば一目瞭然です。短針や長針が時計を「4分割(15分刻み)」にしても「3分割(20分刻み)」にしても、ピタリと目盛りの上に針が重なります。もし時計が10進法(1時間=100分)だった場合、3等分は33.333...分となり、日常の待ち合わせや作業分担で混乱を招くことは避けられません。