熊本の昼を語る上で、いまや主役の座を不動のものとしたのがあか牛丼だ。阿蘇の大草原でストレスなく放牧された褐毛和種(あかうし)は、余分な脂肪分が少なく、アミノ酸を豊富に含んだ濃密な赤身が最大の特徴である。レアに焼き上げられた肉片が丼一面を覆い尽くし、中央に鎮座する半熟卵を崩した瞬間、舌の上で芳醇な旨味が爆発する。
昨今の外食産業では健康志向と本物志向が同時進行しているが、あか牛はその潮流のど真ん中を射抜いた。タレの甘辛さに頼り切るのではなく、自家製の山葵味噌や熊本特有の赤酒を煮詰めたジュレを添えるなど、各店がオリジナルの進化を競い合っている。噛み締めるほどに溢れ出す野性味と品格。それは、一度味わえば胃袋に強烈な記憶を刻み込む。