バレーボールタイ王国女子代表が世界中のバレーボールファンを釘付けにしている最大の要因は、現代バレーの潮流である「高さとパワー」に真っ向からアンチテーゼを突きつける変幻自在の超高速コンビネーションにあります。
欧米の強豪国が2メートル近い長身から打ち下ろす角度あるスパイクを武器とするのに対し、タイ代表の平均身長はおよそ177cm前後。この圧倒的なフィジカルギャップを埋めるために編み出されたのが、セッターから放たれる低く速いトスに複数のアタッカーが同時にトップスピードで助走へ入る「シンクロ攻撃」の徹底です。
前衛のアタッカーだけでなく、後衛のチャッチュオン・モクシーやピンピチャヤ・コクラムが絶妙なタイミングでパイプ攻撃(中央からのバックアタック)へ飛び込み、相手ブロッカーに的を絞らせません。相手のブロックが完成する前にコースを打ち分ける技術、軟打と強打を織り交ぜる卓越したゲームIQは、国際バレーボール連盟(FIVB)の技術分析レポートでも「世界屈指の展開スピード」と高く評価されています。
さらに見逃せないのが、失点しても即座にハイタッチを交わし、コート上で満面の笑みをたたえ合う「心理的安全性」の高さです。代表合宿を取材したスポーツライターの証言によると、「ミスした選手を孤立させず、ポジティブな感情のフィードバックをコンマ数秒で行うコミュニケーション」が組織的に徹底されており、これがプレッシャーのかかるフルセット終盤での驚異的な粘りを生み出しています。