真庭市南部に位置する北房地区は、日本有数のホタル生息地として広く知られる。しかし、多くの人々が集中するメインの公園エリアから備中川をわずかに遡ると、観光ポスターには載らない濃密な暗がりが広がる。こここそが、地元住民だけが知る特別な観賞ポイントだ。
川岸を取り囲む豊かな広葉樹と緩やかな水流が、ゲンジボタルの幼虫が餌とするカワニナの理想的な繁殖環境を作り出している。護岸工事の手が入っていない自然のままの土手には、数千匹とも形容される光の帯が波のように明滅する。車のヘッドライトが届かないカーブの先へ一歩踏み出すだけで、まるで夜空の星々が地上に降り注いだかのような錯覚に包まれる。