関西グルメの歴史において、これほどまでに視覚と嗅覚を強く刺激する食材があっただろうか。その筆頭格がラクレットチーズだ。かつては一部の輸入食材店や高級レストランでしかお目にかかれなかった食材が、今や街のチーズ専門店でダイナミックに楽しめるようになった。
名店と呼ばれるショップのこだわりは、温度管理と切り出しの角度にまで及ぶ。断面を適切な強火で均一に炙り、フツフツと泡立った瞬間に手際よく削ぎ落とす。表面の香ばしい焦げ目と、内側の濃密でとろみのある質感。この2つが織りなすコントラストこそ、職人技の真骨頂だ。熱々の鉄板から立ち上る蒸気とともに味わう瞬間は、まさに至福の時間と言わざるを得ない。