最大の隔絶は「気候」と「腸内環境」の差異にある。インド亜大陸の乾燥した熱帯・亜熱帯性気候と、四方を海に囲まれた日本の温暖湿潤気候では、人体が受ける環境ストレスの性質が根本から異なる。
日本の環境下では、湿邪(体内に溜まる余分な水分)による巡りの停滞が起こりやすい。そこに重厚な油脂を用いたトリートメントや高カロリーなギーを過剰に投入すれば、水分代謝の機能不全を助長するのは自明の理だ。さらに近年のマイクロバイオーム(腸内細菌叢)研究は、日本人の腸が海藻類や穀物の分解に特化した独自の生態系を保持していることを明らかにしている。油分や強烈なスパイスを主軸とする代謝経路とは、遺伝的にも食文化史的にも前提条件が違うのだ。
2026年の予防医療アプローチにおいて不可欠なのは、「教条主義的な模倣」からの脱却である。南アジア仕様のメソッドをそのままトレースするのではなく、湿度の高い環境下で暮らす私たちの消化能力に見合う形へ再設計しなければ、どれほど高邁な哲学も身体を痛めつける凶器へと変貌してしまう。