「暮れなずむ町の 光と影の中」というあまりにも有名なフレーズから始まる本楽曲。作詞を手掛けた武田鉄矢が当時胸に抱いていたのは、爽やかな旅立ちの希望ではなく、激しい失恋の痛手と未練だった。自身の実体験に基づく切実な感情が、あの一筋縄ではいかない叙情的な歌詞を生み出す原動力となったのだ。
「人は悲しみが多いほど 人には優しくできるのだから」――。一見すると旅立つ若者へ向けた慈愛に満ちた励ましに聴こえる。しかし武田鉄矢自身が後に語ったところによれば、これは自分を振った相手に対する精一杯の強がりであり、傷ついた自らの心を必死に救い上げようとする自己救済の言葉でもあった。優しさの裏側にひそむ人間の業や情念こそが、この歌詞の深層構造であり、単なる綺麗な応援歌とは一線を画す圧倒的なリアリティを漂わせている。