昆虫食と聞くと、独特の青臭さや土臭さを連想する人が少なくありません。しかし、テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)はその固定観念を根底から覆す存在です。フランスの昆虫学者ジャン=アンリ・ファーブルも自著『昆虫記』の中でその味を称賛した記録が残されているほど、世界各地で古くから貴重な蛋白源・美味として珍重されてきました。
最大の理由は、その育つ環境と食性にあります。多くの昆虫が腐葉土や雑多な有機物を食べるのに対し、カミキリムシの幼虫は健全な樹木の木部(セルロースやリグニン)や樹液だけを食べて育ちます。体内が極めて清浄に保たれるため、泥臭さや不快な内臓臭が一切生じません。
実際に口にした野食研究家や愛好家たちのレポートによると、カミキリムシの幼虫の味は「上質な発酵バターを思わせる濃厚なミルク感」「ヘーゼルナッツのような香ばしいコク」「極上のウニや白子のようなとろける舌触り」と形容されます。噛んだ瞬間に薄い表皮がプチッと弾け、中からあふれ出す上質な脂質とアミノ酸の旨味は、他の食材では替えがきかない唯一無二の美味とされています。
日本国内で特に食用として評価が高いのは、大型のシロスジカミキリや、庭木・果樹によく見られるゴマダラカミキリの幼虫です。特にクリやクヌギなどの硬質樹に穿孔するシロスジカミキリの幼虫は、体長が6〜8センチ近くに達することもあり、一口で極上の脂の甘みを存分に味わうことができます。