単体では読みにくい「拗」ですが、熟語の形になると誰もが一度は耳にしたことがある言葉へと姿を変えます。特に社会人が確実に押さえておくべき二大熟語が「執拗」と「拗音」です。
1. 執拗(しつよう/しつおう)の読み方と意味
「執拗」は、相手が嫌がったり諦めたりする状況でも、「しつこく自分の意志や態度を押し通そうとするさま」を指します。新聞や法廷ニュースで「執拗なつきまとい行為」「執拗に迫る」といったフレーズで頻出する語彙です。
読み方は「しつよう」がもっとも一般的ですが、伝統的な慣用読みとして「しつおう」と読んでも間違いではありません。三省堂や岩波書店の主要国語辞典においても、「しつおう」は「しつよう」の古風な言い回し、あるいは別読として認容されています。「執」は執着の「しゅう・しつ」であり、執着して頑固に態度をねじ曲げない様が「執拗」の本義です。
2. 拗音(ようおん)の基礎知識
小学校の国語で習う「きゃ・きゅ・きょ」「しゃ・しゅ・しょ」「ちゃ・ちゅ・ちょ」など、仮名に小さな「ゃ・ゅ・ょ」を添えて1拍として発音する音を「拗音」と呼びます。
まっすぐに口を開けて発音する「直音(ちょくおん:か、さ、た等)」に対して、舌や口の形をねじるように変形させて発音する音であることから、「ねじれた音=拗音」と命名されました。日常会話で意識することは少ないものの、国語文法や日本語教育の現場では極めて身近な専門用語です。
3. 「拗」を使った代表的な熟語一覧
「執拗」「拗音」以外にも、文学作品や古典的な論考には以下のような熟語が登場します。
- 拗屈(ようくつ):心がねじけて素直でないこと。文章の調子が滑らかでなく、ゴツゴツして読みにくいこと。
- 拗木(ねじき/ようぼく):幹や枝がねじれ曲がった樹木。転じて、頑固で融通が利かないひねくれ者の比喩。
- 拗折(ようせつ):無理に折り曲げること。心がくじけること。
- 拗体(ようたい):定型から外れた、ひねくれた文体や形式。