長年にわたり数多くのベストセラー英語学習書を手がけてきたデイビッド・セイン氏は、日本語の挨拶をそのまま英語に直訳しようとする発想そのものに注意を促している。「ただいま」と「I'm home.」は一見イコールに見えるが、その根底にある心理的メカニズムには明確な違いが存在するからだ。
日本語の「ただいま」は、「只今戻りました」という無事の報告であり、一種の儀礼的な合図の側面が強い。一方で英語圏における帰宅の第一声は、その後に続く雑談やコミュニケーションの「ドアを開けるためのフック」として機能する。セイン氏によれば、「I'm home, and I'm starving!」(ただいま!もうお腹ペコペコだよ)のように、自分の感情や状態をセットで伝えるのがネイティブ流の表現法だという。
「言葉そのものを訳すのではなく、その言葉が持つ役割を訳す」。この視点を持つだけで、ネイティブとの会話におけるつっかかりは一気に解消される。単なる単語の置き換えから脱却することが、脱・初心者への大きな一歩となる。