汗をぬぐいながら1,368段目を踏み越えると、目の前に突如として朱塗りの鮮やかな社殿が現れる。これが厳魂神社(いづたまじんじゃ)だ。金刀比羅宮を開いた金剛坊宥現(ゆうげん)上人を祀るこの神社は、まさに山の崖にへばりつくように建っている。
社殿の左手に視線を移すと、垂直にそびえ立つ巨岩「威徳巌(いとくいわ)」の岩肌が迫る。その高所に、天狗と烏天狗の面が刻まれているのを見つけることができるだろう。宥現上人が死後、天狗となってこの山を守る霊神となったという伝説が今も息づく場所だ。切り立った岩壁を見上げていると、谷を吹き抜ける風の音に交じって、天狗のはばたきが聞こえてくるかのような錯覚すら覚える。