10月最後の週末、ハチ公前広場の空気は張り詰めていた。かつて酒瓶が散乱し仮装客が入り乱れていた光景は、そこにはない。渋谷区役所が主導する路上飲酒禁止条例の厳罰化と通年適用により、街のルールは完全に塗り替えられた。
長谷部健渋谷区長が打ち出した「ハロウィン目的で渋谷に来ないでほしい」という異例のメッセージは、一時的なパフォーマンスでは終わらなかった。街頭路地には民間警備員と区のパトロール隊が隙間なく配置され、警視庁の機動隊員が要所を固める。缶ビールを手にした通行人には即座に声がかかり、トラブルの芽は容赦なく摘み取られていく。かつての無法地帯を知る者にとって、この静寂は息をのむほど徹底されたものだ。
だが、締め付けだけが目的ではない。区が目指すのは、治安の回復と都市ブランドの再構築だ。夜間のゴミ放置や器物損壊に頭を悩ませてきた地元商店街からは、安堵の声が漏れる。路上を占拠する狂乱を排したことで、家族連れや落ち着いた観光客が夕方の渋谷を安心して歩ける環境が戻りつつある。