見慣れない寝相が突如として現れた場合、それは痛覚や呼吸器障害を和らげようとする必死の代償行為かもしれない。獣医学の臨床現場では、特定の寝姿勢が重大な疾患の初期徴候として診断の契機になるケースが後を絶たない。
とりわけ緊急性が高いのは、胸を床から浮かせ、首を前方にまっすぐ伸ばして眠ろうとする姿勢だ。これは起坐呼吸と呼ばれ、胸水貯留、重度の肺炎、あるいはうっ血性心不全によって肺が圧迫され、横たわると呼吸困難に陥るために起こる。日本獣医師会が発信する日常ケアの注意喚起でも、呼吸困難時の不自然な姿勢変化は見逃してはならない危険シグナルとして挙げられている。
他にも注意すべき寝相の異常パターンが存在する。
壁や家具の角に頭を強く押し付けたままじっと動かない「ヘッドプレッシング」は、脳腫瘍や肝性脳症など中枢神経系の重篤なトラブルを疑うべき状態だ。また、関節炎や内臓痛を抱える猫は、お腹を圧迫しないよう不自然に片側だけをかばって寝たり、以前は好んでいた高い寝床へ上がれなくなったりする。「いつもと違う体勢でじっと耐えるように寝ている」と感じたら、躊躇せず動物病院を受診すべきだ。