なぜ「一部」と「始終」という二つの言葉が合体したのだろうか。その語源・由来を紐解くと、古代の仏教文化にたどり着く。そもそも「一部」とは、一揃い・一巻の経典全体を指す言葉であった。一切経や法華経といった膨大な仏典の一巻すべてを指す概念だ。
そこに、物事の始まりと終わりを意味する「始終」が組み合わさった。つまり、経典の最初から最後までを一切の漏れなく読誦・書写するというストイックな行為が転じて、現代のような「事の経緯のすべて」を指す表現へと昇華したのだ。金田一京助をはじめとする国語学者たちが解き明かしてきた日本語の変遷史においても、宗教的術語が日常の概念へと浸透していった美しい結実の例として挙げられる。