本堂の奥深くに鎮座する大岩日石寺磨崖仏は、巨岩の壁面に直接刻まれた不動明王像であり、国の重要文化財に指定されている。一説には平安時代初期、弘法大師 空海がこの地を訪れた際に一夜にして爪で彫り上げたという伝説が残る。巨大な岩肌から浮かび上がる明王の怒りの表情と、その左右に従う童子たちの精密な造形は、見つめる者を圧倒して離さない。
薄暗いお堂の中でろうそくの炎が揺らぐたび、岩に深く刻まれた影が生き物のように動いて見えてくる。この彫刻は単に岩を掘ったものではなく、自然の岩山そのものを神聖な仏体と見なす古来の自然信仰と高度な仏教美術が融合した至高の傑作だ。歴史の波を乗り越えてなお風化することなく佇むその迫力は、何世紀もの時を超えて巡礼者の心を揺さぶり続けている。