海外に目を向ければ、米HBO作品に代表される海外ドラマが描く妥協のないハードボイルドな世界観が世界中を魅了している。泥臭い人間模様や社会の暗部を描くうえで、喫煙シーンはキャラクターの過酷な日常を生々しく伝える要素として機能している。
翻って日本の邦画界でも、任侠映画から社会派サスペンスまで数々の名作を世に送り出してきた東映をはじめとする映画各社が、表現のリアリティを求めて試行錯誤を重ねてきた。現在、日本映画製作者連盟が示すガイドラインやコンプライアンスの波が押し寄せるなか、地上波ドラマでは見られなくなった生々しい描写が、映画館の暗闇や配信画面の中で独自の存在感を解き放っている。規制と表現の狭間で格闘するクリエイターたちにとって、煙草はリアルな人間を描き切るための重要な砦なのだ。