「目が据わる」という表現を辞書で調べると、一般に「酒に酔ったり、怒ったり、あるいは疲労や病気などによって、目がすわって焦点が合わなくなること」と説明される。しかし、私たちがこの状態を目の当たりにした際に覚える漠然とした恐怖や異物感は、単に「目が動いていない」ことだけが原因ではない。
通常、人間の目は無意識のうちに微細な眼球運動(サッケード)を繰り返し、周囲の情報を絶えず収集している。視界の一部を常に細かくスキャンすることで、脳は周囲の状況を認知し、リラックスした状態を保つ。ところが、「目が据わった」状態になると、この微細な眼球運動が急激に減少する。まばたきの回数が極端に減り、眼球が1点に固定され、目の開き加減が不自然に固直する。これが、周囲の人々に「感情が消えた」「焦点が合っていない」「底知れぬ圧迫感がある」という強い違和感を与えるのだ。