この独創的な音楽の源流は、愛媛県今治市にある歴史ある寺院、海禅寺にある。臨済宗妙心寺派の僧侶として日々の務めを果たしながら、ボーカルユニット「キッサコ」のフロントマンとして長年ポップスシーンで歌声を磨いてきた薬師寺寛邦氏。彼にとって、仏教と音楽は決して相反するものではなかった。
大乗仏教が説く根源的な慈悲の精神。「苦しみを抱える人々に寄り添い、救いをもたらす」という仏教の教えと、「言葉とメロディで人の心を動かす」という音楽の力は、彼のなかで完全に一つへと結実した。寺院の日常で培われた精神性と、シンガーソングライターとして培ったコードワークやメロディセンス。その二つが交差した瞬間、誰にも真似できない祈りの音世界が立ち現れたのだ。