ラグジュアリーファッション業界において、アンバサダーの選定は企業の命運を分ける陣取り合戦そのものである。世界最大のラグジュアリーコングロマリットであるLVMHは、傘下の名だたるメゾンに世界各国のトップタレントを適材適所で配分し、全方位的なカルチャー支配を確立している。
歴史と伝統を重んじるシャネルは、時代を超越した独立心と気品を宿す人物を厳選し、ブランドの排他性とプレステージを維持し続ける。対照的に、常にユースカルチャーやストリートの感性を取り込みながら再構築を図るグッチは、ジェンダーや固定観念にとらわれないエッジの効いた表現者を起用することで、次世代のファンコミュニティを熱狂させる。誰をアンバサダーの玉座に据えるかは、そのブランドが今後10年でどの層へ進軍するのかを示す宣戦布告に他ならない。