稚内港からフェリーに揺られること約1時間40分。利尻島の玄関口・鴛泊港に降り立つと、ウミネコの鳴き声と心地よい潮風が迎えてくれる。ここからさらに車を走らせた利尻町沓形(くつがた)地区に、その店はある。
「この一杯のためにパリから飛んできました」。そう語るのは、フードジャーナリストのジャン・リュック氏だ。近年、ヨーロッパや北米を中心に、観光名所を巡る従来の旅行ではなく「その土地でしか味わえない唯一無二の食」を目的に遠方へと旅するエクストリーム・フードツーリズムが爆発的な広がりを見せている。アクセスの難度が高ければ高いほど、体験の希少価値は跳ね上がる。
開店前の店頭には、地元島民と世界各国から集まった旅行者が入り交じり、静かな熱気に包まれる。風が止み、暖簾が掲げられた瞬間、待ちわびた客たちが一斉に店内に吸い込まれていく。