次に、先進諸国の血液型事情を見ていきましょう。欧米諸国の血液型分布データは、日本人の常識を根底から揺さぶるもう一つの巨大な差異を抱えています。それが「Rh因子(Rhマイナス)」の比率です。
まずアメリカ血液型分布を見ると、国全体としてはO型が約45%、A型が約40%で、この2つだけで全体の85%以上を占めます。ただし、アメリカは多民族国家であるため、背景によって大きく数値が変動します。アフリカ系やヒスパニック系コミュニティではO型の割合が50%を超える一方、白人層ではA型が40%台半ばに達するなど、地域やコミュニティの病院によって必要とされる備蓄血液の比率が明確に異なります。
一方、ヨーロッパ血液型割合の特徴は、西欧や北欧(フランス、ドイツ、スウェーデンなど)においてA型が40〜45%前後と非常に高く、O型と激しい競合関係にある点です。そして最大の特徴は、東から西へ行くほどB型が劇的に減少することです。インド周辺で40%近くを誇るB型は、ロシアから東欧を経て西欧に到達する頃には10%未満にまで落ち込みます。これはユーラシア大陸を西進した騎馬遊牧民の遺伝子浸透が西欧の奥深くまで届かなかった歴史的動態を克明に示しています。
そして、私たちが海外渡航や長期滞在において最も警戒すべきデータが、Rhマイナス割合世界の実態です。
日本国内におけるRhマイナスの割合は、わずか約0.5%(200人に1人)にすぎません。そのため、日本の輸血医療現場ではRhプラスを前提とした体制が敷かれ、Rhマイナスは極めて特別な管理対象とされます。ところが、ヨーロッパ系白人集団においては、実に約15%(およそ6人に1人)がRhマイナスなのです。スペインとフランスの国境に位置するバスク地方にいたっては、約30%がRhマイナスという驚愕の数値が記録されています。
このデータは、医療ツーリズムや海外駐在において時に深刻な混乱を引き起こします。欧米の血液銀行はRhマイナスの需要が高いため常時一定のストックを持っていますが、逆にアジア圏に旅行する欧米人が大事故に遭った場合、現地の病院にRhマイナスの血液ストックが決定的に不足し、緊急輸血が滞るリスクが現実の医療課題として浮上するのです。