多くの親や当事者が最初に抱く疑問が、「成長すれば自然に治るのではないか」という淡い期待です。幼児が「さかな」を「たかな」と言い間違えるような発達途上の誤りであれば、聴覚の発達や口腔機能の成熟に伴って5〜6歳頃までに自然治癒する例が数多く見られます。しかし、言語聴覚療法や日本音声言語医学会の臨床知見において、側音化構音の自然治癒は極めて稀であると結論づけられています。
側音化構音は、一般的な「機能性構音障害」の中でも特異な位置を占めます。機能性構音障害との違いとして最も際立つのは、発達段階の音の置き換わり(置換)ではなく、本来の日本語には存在しない歪んだ音(歪み)が、誤った口腔運動のパターンとして脳と筋肉に強固に記憶されてしまう点です。
放置が危険視される背景には、学童期以降への影響があります。年齢が上がるにつれて発声器官の柔軟性が低下するだけでなく、誤った発音運動が神経ネットワークに定着してしまいます。結果として、思春期における対人不安や、人前で話すことに対する強い心理的回避行動へと発展するケースが臨床現場でも多数報告されています。「様子を見ましょう」という言葉を鵜呑みにして小学校中学年を過ぎてしまうと、矯正に要する期間が格段に長引くため、早期発見と適切な介入が欠かせません。