土壌の生物多様性を高め、環境負荷を最小限に抑えながら持続可能な作物を育てる不耕起栽培は、極めて価値ある農法です。しかし、すべての栽培者や土地に一律に推奨できるわけではありません。自身の条件を客観的に見極める必要があります。
【不耕起栽培を強くおすすめできる人】
- 長期的な視点で土壌の変化を楽しめる人:初年度の減収やトラブルに一喜一憂せず、3〜5年スパンで土の団粒化や生態系の成熟を観察できる時間的・心理的余裕がある人。
- 土質が砂壌土〜壌土で、排水性が良好な圃場を持つ人:もともと水はけが良く、適度な有機物を含む土壌は、不耕起へ移行しても硬化しにくく成功率が跳ね上がります。
- 観察眼が鋭く、緑肥や微生物の生態に興味がある人:雑草の生え方で作物の過不足を察知し、カバークロップを巧みに組み合わせるアグロエコロジカルな試行錯誤を好む人。
【不耕起栽培への参入に慎重になるべき人】
- 短期的な投資回収や初年度からの高収量を絶対条件とする専業農家:移行初期の減収リスクを吸収できる資金的クッションがない場合、経営破綻の引き金になりかねません。
- 極端な重粘土質や排水不良の圃場を管理している人:水が抜けず粘土が固まりやすい土壌で不耕起を敢行すると、根腐れや酸欠が頻発し、栽培そのものが成立しなくなります。暗渠排水などの大規模な基盤整備が先決です。
- 「完全放任・ノーメンテナンス」を期待している人:耕起という力技を使えない分、精密な草管理と残渣管理が要求されます。手抜き目的の参入は、雑草の猛威によって確実な挫折を招きます。