ネット上の言説や世間の認識において最も蔓延している誤解は、「言葉が出ないのは年を取れば誰にでもある当たり前の老化現象だ」という短絡的な決めつけです。老化による良性の健忘(加齢性物忘れ)は、「ヒントを出されれば即座に思い出せる」「体験したこと自体は覚えている」という特徴を持ちます。これに対し、言語中枢自体の障害や認知機能の低下では、ヒントを出されても該当する語彙が検索できず、自覚症状そのものが乏しいケースすらあります。
さらに危険な盲点が、「一晩ぐっすり寝て症状が治まったから、病院に行く必要はない」という思い込みです。先述の通り、TIAは血流が一時的に回復することで症状が嘘のように消失します。しかし、これは「治った」のではなく「本格的な血管閉塞の予行練習が行われた」状態に過ぎません。「今症状がないから受診しても無駄ではないか」と躊躇している間に、完全麻痺を伴う大発作に見舞われる事例が後を絶ちません。