本作の背景にある世界観の解説を進めるうえで欠かせないのが、随所に見られる民俗学的なモチーフです。「七」という数字は、古今東西の伝承において特別な意味を持ちます。日本神話の「神世七代」や仏教の「初七日・四十九日(七七日)」、さらには童歌「七つの子」「通りゃんせ(行きはよいよい、帰りは恐い)」など、生と死の境界を象徴する元ネタが色濃く反映されています。
「忘れ水」や「境界の岸辺」といった語句は、現世と常世(あの世)を隔てる川原を彷彿とさせます。主人公は失われた大切な存在を求め、禁忌とされる領域へと足を踏み入れている情景が、緻密な言葉の重なりによって鮮やかに描き出されています。