木馬亭の引き戸がガラガラと音を立てて開く。畳敷きの桟敷席とパイプ椅子がぎっしりと並ぶ場内には、すでに独特の緊張感と弛緩した笑いが共存している。ここは日本浪曲協会の定席としても知られる聖地だが、この日ばかりは客席の顔ぶれが明らかに違う。昔ながらの常連客はもちろん、革ジャンを着込んだ若者やサブカルチャー好きのカルチャー層が肩を並べて開演を待っているのだ。
「まさかこんなに早く札止めになるとはね」。浅草で生まれ育ったという70代の男性が嬉しそうに語る。大衆演劇や寄席の文化が根付くこの街でも、この熱狂の渦は異例だ。狭いロビーには湯気のような熱気がこもり、開演ベルが鳴る前から客席の体温は確実に上がっていた。