鹿児島県内の代表的な温泉地である霧島温泉と指宿温泉では、それぞれ異なる地理的リスクと捜索上の難所が存在します。各エリアの現場環境を比較検証することで、捜索が難航した背景をより深く理解できます。
霧島温泉郷の周辺環境は、標高の高さと広大な国有林、活火山・霧島連山からの噴気地帯が特徴です。深い霧(濃霧)が頻繁に発生するため、わずか数メートル先すら見通せなくなる「ホワイトアウト」に近い状態に陥りやすく、視界不良が捜索活動を阻む最大の壁となりました。
一方、指宿温泉の周辺環境は、海と山が隣接する特有の地形を有しています。沿岸部の断崖絶壁や干潟、生い茂る亜熱帯性の樹木など、平坦に見える場所でも複雑な段差が存在します。散策客が海沿いの遊歩道から外れて波打ち際や磯場に迷い込むと、潮の満ち引きによって退路を断たれる危険性があります。
救助隊員の証言によると、「温泉街という言葉のイメージから市街地捜索を想像しがちだが、現場は完全な山岳遭難・沿岸遭難の救助現場そのものである」と語られています。観光地と大自然が隣り合わせであることこそが、鹿児島の温泉地の大きな特徴です。