お茶の間では「おバカキャラ」や「とぼけたボケ役」を演じきっていた加藤茶氏ですが、音楽業界のプロフェッショナルの間では、そのドラムの腕前は日本屈指の技術として一貫して高く評価されてきました。
1966年6月に行われたザ・ビートルズの日本武道館公演において、ザ・ドリフターズは前座としてステージに立ちました。持ち時間わずか数分という過酷な状況下、英国のロックバンド『ザ・ロッキン・ベリーズ』の「のっぽのサリー」を演奏した際、加藤氏が見せた高速かつタイトなドラミングは、武道館を埋め尽くした観客と関係者を驚愕させました。
ジャズ界の巨人ジーン・クルーパやバディ・リッチに影響を受けたそのプレイスタイルは、正確無比なタイム感と、スネアドラムのオープンリムショットの切れ味が際立っています。『ドリフ大爆笑』のオープニングテーマや各種音楽バラエティで披露されたドラムソロを見返すと、上半身をほとんどブレさせずに繰り出される手数の多さとダイナミクスレンジの広さに圧倒されます。
「笑わせるために、まず音楽で完璧なプロフェッショナルでなければならない」というクレイジーキャッツ以来のジャズ・コミックバンドの美学を、加藤茶氏はドラムスティック一本で体現していたのです。