「受信料を支払っているのだから、NHKの過去作品はすべてネット上で永久に無料公開されるべきではないか」という意見がネット上で散見されます。しかし、この主張は法制度と著作権ビジネスの構造を無視した誤解に基づいています。
過去作が自由に配信・再放送されない最大の要因は、出演者の肖像権および音楽の公衆送信権のクリアランス問題です。昭和から平成初期にかけて制作されたドラマは、制作当時に「インターネット配信」という概念が存在しなかったため、出演契約や音楽使用許諾があくまで「テレビ放送のみ」に限定されていました。作品を再配信するためには、脚本家、原作者、出演俳優(故人の場合は相続人)、さらには劇中で使用された既成曲の著作権者全員から個別に再許諾を取り直す必要があります。
さらに深刻なのが、出演俳優のスキャンダルや契約トラブルによるお蔵入りです。主要キャストが不祥事を起こした場合、作品全体のお蔵入りを余儀なくされるケースは後を絶ちません。また、初期の大河ドラマ(『太閤記』や『三姉妹』など)では、当時極めて高価だった放送用2インチビデオテープが他の番組に上書き録画されて再利用されたため、マスターテープ自体が局内に現存しないという物理的消失も多数存在します。これらは視聴者からの寄贈テープを発掘・修復する「NHK番組発掘プロジェクト」によって少しずつ救出されていますが、商業配信に乗せるには画質や権利面で極めて高いハードルが残されています。