有権者が政治情報に触れるメディアの変容も、色彩戦略に大きな影響を与えている。かつて主流だったNHKの政見放送では、画面の解像度や照明の制約から、高コントラストで視認性の高い原色が好まれる傾向にあった。NHKのスタジオ収録という限られた環境下で、候補者をいかに際立たせるかが至上命令だったからだ。
しかし現代、戦場はX(旧Twitter)やTikTokなどのデジタルプラットフォームへと拡大している。タイムラインを高速でスクロールするユーザーの手を止めるには、スマートフォンの有機ELディスプレイに映える明瞭かつエモーショナルなカラー設計が欠かせない。政見放送の「堅牢な色使い」と、SNSの「魅せる色使い」。二刀流の視覚戦略を使いこなせるかどうかが、現代政治家のアキレス腱となっている。