魁傑を語る上で欠かせないのが、同部屋で同い年の横綱・輪島とのコントラストです。日本大学から鳴り物入りで入門し、黄金の左下手投げと天才的な相撲勘、そして黄色いリンカーンを乗り回す華やかなライフスタイルで脚光を浴びた輪島大士。その真逆の位置にいたのが魁傑でした。
酒や夜遊びを極力控え、宿舎でも黙々とダンベルを持ち上げていた姿は、まさに求道者そのもの。天才肌の輪島と、努力を肉体化した魁傑のライバル関係について、心温まる魁傑のエピソードが残されています。相撲スタイルも性格も全く噛み合わない二人でしたが、輪島は魁傑の純粋さと努力の才能を誰よりもリスペクトしており、魁傑もまた土俵上で輪島の天才性と本気でぶつかり合いました。
ある日、周囲から「もっと要領よく立ち回れば怪我も減るのでは」と助言された際、彼は「不器用にしか生きられないのが自分ですから」と静かに微笑んだといいます。その飾り気のない一言に、彼の生き方すべてが集約されていました。