1997年、宮崎駿監督の映画『もののけ姫』が公開された際、日本中がその歌声に言葉を失った。男性でありながら女性のソプラノ音域を透明感あふれる美声で歌い上げるカウンターテナー。当時、日本の一般音楽ファンにはまだ馴染みの薄かったこの声楽パートを、一夜にしてお茶の間のメジャーな存在へと押し上げたのが彼だった。
だが、彼の真価はアニメ主題歌の成功だけに留まらない。洗足学園音楽大学で声楽を学び、欧州の古楽シーンでも高い評価を得ていた彼の根底には、緻密な表現力と高度な声楽技術が存在する。バロック音楽の宗教曲から繊細な日本の抒情歌まで、彼の手にかかれば一音一音が祈りのような熱量を帯びて響くのだ。