本作を類まれなリーガルサスペンスたらしめているのは、主人公・九条間人の特異なスタンスである。九条は正義の味方でもなければ、弱者を無条件に救済する英雄でもない。彼の信条はあくまで「法を武器として依頼人の利益を最大化すること」であり、そこに道徳的な善悪の判断を持ち込まない。
菅原の運命に対しても、九条の法律論は冷徹な機能美を見せる。法律は必ずしも弱者を幸福にするために機能するわけではなく、時には残酷な現実を固定化する道具にもなり得る。九条が提示する法的な解決策と、裏社会の掟との間に生じる埋めようのない亀裂。この境界線上で生じる摩擦こそが、物語に息詰まる緊張感を与えている。