数ある傑作の中でも、大人の涙腺を特に刺激するのが不朽の名作『映画ドラえもん のび太の恐竜』だ。白亜紀の大自然を舞台に繰り広げられるピー助との友情と別れは、何度観ても涙を禁じ得ない。この作品の裏には、人間と異種族間の絆という原作者・藤子・F・不二雄が生涯をかけて問い続けた「他者への共感」というテーマが込められている。ピー助との別れのシーンで、のび太があえて突き放すような行動をとる心理描写には、自立と成長の残酷なまでのリアリティが潜んでいる。
また、短編の傑作として語り継がれる『映画ドラえもん のび太の結婚前夜』も外せない。しずかちゃんの父親が結婚前夜に語る言葉は、子育てを経験した大人や人生の岐路に立つ人々に強烈なインスピレーションを与える。完璧ではないのび太がなぜ選ばれたのか。その理由を語る父親の温かい眼差しは、人間としての本質的な価値を突いており、観る者の心を温かい涙で満たすのだ。