本作が多くの視聴者を惹きつけた最大の要因は、緻密に描かれた人間関係のグラデーションにあります。とりわけ前半のハイライトとなったのが、伊藤沙莉演じる寅子と、仲野太賀演じる佐田優三の夫婦関係でした。
社会的地位を得るための「契約結婚」としてスタートしたふたりの関係は、互いの志と痛みを分かち合う中で唯一無二のパートナーシップへと育まれていきました。優三が戦地へ赴く直前、寅子に告げた「トラちゃんの好きに生きなさい」という言葉は、従来の「夫が妻を従属させる」家父長制的な枠組みを根底から覆す名シーンとして、放送後も語り継がれています。
後半のキーマンとなった星航一(岡田将生)との関係でも、姓を変えることへの違和感や別姓同居のあり方が描かれました。単なるメロドラマに終始せず、法と制度の間で揺れる個人の尊厳を丁寧に描写した登場人物たちの相関図は、現代の家族のあり方に強い示唆を与えています。