胡蝶 しのぶは、大ヒット作『鬼滅の刃』において、ひときわ異彩を放つキャラクターだ。鬼殺隊の最高位「柱」の一人でありながら、腕力の限界から鬼の首を斬ることができない唯一の剣士。可憐な蝶のごとく舞い、特製の毒で鬼を屠るその姿は、世界中のファンの心に深い焼き付けを残してきた。
世界的な大反響を呼んでいる『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』の映像美の中でも、ファンが最も固唾をのんで見守ったのが胡蝶 しのぶの壮絶な死闘と、その衝撃の結末だった。なぜ彼女はあそこまで凄絶な覚悟を胸に秘めて戦場へと赴いたのか。その真実と裏設定を紐解いていく。
宿敵・童磨との因縁と「無限城編」で描かれた壮絶な最期
無限城の入り口で対峙したのは、上弦の弐・童磨。胡蝶しのぶにとって童磨は、最愛の姉・胡蝶カナエの命を奪った宿敵そのものだ。感情を持たず、人を食らうことを「救済」と宣う凶悪な鬼に対し、しのぶは研ぎ澄まされた刺突技で挑みかかる。
だが、上弦の鬼の強壁はあまりにも高かった。肺を凍らせる童磨の血鬼術の前に、しのぶの体は限界を迎え、鎖骨や肋骨を砕かれる痛恨の打撃を受ける。刀を振るうことすら絶望的な状況下で、彼女が見せたのは決して屈しない眼光だった。
体内に巡らせた藤の花の毒:全自重を捧げた執念の企み
童磨戦における最大の衝撃は、しのぶが自らの身体そのものを「劇薬」へと変貌させていた事実である。小柄な体格ゆえに首を斬れない弱点を自覚していた彼女は、一年以上にわたり、藤の花の毒を日常的に摂取し続けていた。
その量は体重37キログラム分、実に致死量の700倍に及ぶ。女性を好んで貪り喰う童磨の習性を見越し、自らを喰わせることで体内の毒を全身に巡らせる――。まさに命を賭した捨て身の策略だった。しのぶの肉体を吸収した童磨は、やがて全身の細胞が崩壊を始める。この執念の犠牲こそが、後を託された栗花落カナヲや嘴平伊之助による首の切断へとつながる決定打となったのだ。