スキンケア業界で広く愛用されるレチノールですが、産婦人科や皮膚科の現場では「妊娠中のビタミンAスキンケアは一旦お休みしてください」と指導されるのが通例です。その背景には、ビタミンAという栄養素が持つ胎児の細胞分化・形態形成への強い関与が存在します。
ビタミンAは本来、胎児の目や内臓、骨格などの形成に不可欠な必須栄養素です。しかし、母体内のレチノイド濃度が過剰になると、胎児の受胎初期における器官形成シグナルが乱れ、頭蓋骨・顔面、中枢神経系、心血管系などに異常を引き起こす催奇形性(さいきけいせい)のリスクが高まることが知られています。
もちろん、これは主に大量のビタミンAを体内に取り込んだ場合に生じるリスクです。しかし、妊娠初期は赤ちゃんの重要な臓器が一気に作られる極めて繊細な時期であるため、安全性を最優先して「外用であっても念のため控える」という方針が世界的なスタンダードになっています。