桜川という街は、道頓堀川の西側に位置し、古くから木材市場や小さな町工場、そして住宅が密接に混在する独特の空気感を保ってきた。千日前通となにわ筋が交差する周辺には、時代の波に洗われたビルがいくつも残る。その中でも、昭和特有の力強い構造体を残すこの建物は、街のランドマークとして異彩を放っている。
階段の手すりに残るブラスの鈍い光や、少し歪んだエレベーターの表示パネル。現代の整然としたオフィスビルには決して真似できない「時間の重み」がここにはある。かつてはスナックや小さな事務所がひしめき、夜な夜な地元のビジネスマンたちがグラスを傾けていた場所だ。その歴史のレイヤーの上に、新しいカルチャーが重なり合っている。