自動車エンスージアストが集うコミュニティやオーナーズミーティング、各種SNS、知恵袋の投稿を丹念に洗い出すと、グラントゥーリズモのオーナーたちによる歓喜と苦悩の生々しい叫びが浮かび上がってきます。
まず圧倒的な称賛を集めているのが、「フェラーリ製自然吸気V8(F136系)が放つ排気音の芸術性」です。
「朝一番のコールドスタートこそ近所迷惑で冷や汗をかくが、高速の合流やトンネルで窓を全開にしてシフトダウンし、7,000回転オーバーまで引っ張った瞬間の咆哮は鳥肌が立つ。現行のどんなハイブリッドやターボ車でも絶対に味わえない『本物の楽器』。維持費で年間100万飛ぼうが、この音を聞くためだけに全てを許せてしまう」(40代・初代スポーツ後期型オーナー手記より)
一方で、手放した元オーナーたちの回顧録には、生活環境との不適合による深い疲弊が刻まれています。
「全長4,885mm、全幅1,915mmという大柄な体躯と、絶望的に利かない最小回転半径。都内のコインパーキングやタワーマンションの立体駐車場ではことごとくサイズオーバーで弾かれた。近所のスーパーに乗っていくのも気を遣い、結局週末にしか乗らない盆栽車に。極め付けは真夏のエアコン故障でコンプレッサー交換に40万円。見栄だけで所有し続ける気力が尽き、1年半で売却した」(30代・初代前期型元オーナーの告白)
「乗れば天国、停めれば地獄」とも評されるこの二面性こそ、グラントゥーリズモという車が持つ本質的な毒気であり、オーナーの生活基盤と精神力を容赦なく試す要因となっています。