多くの人々が「北欧の老人」として認識しているサンタクロースだが、その起源をたどると北欧とは正反対の温暖な地中海沿岸に行き着く。4世紀初頭、現在のトルコ(ミュラ、現デムレ)で司教を務めていた聖ニコラオスこそが、すべての始まりである。
聖ニコラオスは貧困に苦しむ家庭の窓から金貨を投げ入れ、娘たちが売られるのを防いだという逸話で知られる。この慈愛に満ちた行動が、民俗学・伝承文化の中でヨーロッパ各地の冬至祭や異教の伝承と融合していった。オランダに伝わった「シンタクラース」伝説が17世紀に新大陸アメリカへ渡り、英語圏で発音しやすい「サンタクロース」へと変容した歴史は、文化の混淆(こんこう)が生み出した奇跡といえるだろう。
つまり、信仰と伝承のルーツとしての祖国は小アジア(トルコ)にあり、現代私たちが知る赤い服と白い髭のビジュアルはアメリカの商業文化によって決定づけられた。歴史の皮肉にも、北極圏のイメージは後付けされた舞台装置に過ぎなかったのだ。