長引く電気・ガス料金の負担感は、家庭料理の風景を容赦なく選別した。数時間ガスコンロを点けっぱなしにする伝統的な煮込み料理は、コスト意識の観点から真っ先に敬遠される対象となった。そこへ直撃したのが、徹底した時間対効果を求める現代人の生活様式である。
仕事終わりに残されたわずかな時間で、本格的な和食を口にしたいという欲求。その矛盾をあっさりと解決したのが、ボタン一つで加熱から保温までを緻密に自走する炊飯ジャーだった。火加減の番人を人間からマイクロプロセッサへ委譲する選択は、現代人にとって最も合理的な自炊の妥協点だったといえる。