掲示板をスクロールすれば、判で押したように並ぶ言葉がある。「遠隔」「サクラ」「顔認証」。国家公安委員会の型式試験を通過した遊技機において、個別の遠隔操作など現代のシステム上ほぼ不可能であることは、業界内では常識とされている。それでもなお、この手の陰謀論が廃れることはない。
なぜ人々は、ありもしない不正を信じたがるのか。パチンコの本質は、不条理な確率との闘いである。完全確率という無慈悲な壁に叩きつけられた時、人間の脳はランダムな事象の中に「作為」や「物語」を見出そうとする。「隣の若者が座って1回転で当たったのは、店長がカメラで見てスイッチを押したからだ」「あの角台で毎日出している奴は店の息がかかったサクラに違いない」。そう信じ込むほうが、自己の無力さや金銭的損失を認めるよりもはるかに精神的ダメージが少ないからだ。
ネットの匿名空間は、こうした個人の認知の歪みを肯定し、増幅させるエコーチェンバーとして完璧に機能する。誰かが「あの店、怪しいよな」と呟けば、同じ日に負けた数十人が「やっぱりそう思うか」「絶対にやってる」と呼応する。かくして、客観的根拠のない妄想が、掲示板の中では絶対的な「真実」へと昇華されていく。