RADWIMPSが提示するタイトルの言葉遊びは、単なる音遊び(駄洒落)の領域をはるかに越境し、人間の内面的な葛藤をえぐる武器として機能しています。
「me me she」に隠された自己愛と比率の冷徹さ
メジャー4thアルバムに収録された名バラード「me me she」。ローマ字読みをすればそのまま「めめしい」、すなわち「女々しい」という男性側の未練を指す日本語になります。しかし、このタイトルの真価は英語の代名詞の組み合わせにあります。
「me(僕)」がふたつ並び、最後に「she(彼女)」がひとつ置かれるこの構図。関係性のなかに「自分」がふたり分存在し、「彼女」はひとり分しか存在しないという力関係を暗示しています。「君のことを誰よりも愛していた」と嘆きながら、結局は自分自身の傷つきや未練ばかりを見つめている主人公の男のナルシシズム。野田洋次郎は、英単語の配置だけで人間の身勝手なエゴを鮮やかに暴き出しているのです。
「五月の蝿」が放つ狂気と熟字訓の解体
2013年にリリースされたシングル「五月の蝿」(読み:ごがつのハエ)もまた、タイトルの経緯が大きな衝撃を与えた楽曲です。日本語には、五月の蝿と書いて「うるさい」と読ませる熟字訓「五月蝿い」が存在します。
野田洋次郎はこの語彙をあえて解体し、名詞としての「蝿」をタイトルに据えました。歌詞中で描かれるのは、裏切られた相手に対する剥き出しの呪詛と憎悪。「君が死んだらその血で文字を書く」とまで歌い上げる凄惨な世界観において、ブンブンと頭の周りを飛び回って離れない蝿の鬱陶しさと、脳裏にこびりついて離れない裏切り者の記憶が、見事なまでに重なり合っています。