皮膚への物理的破壊を伴う旧式の手法は否定されたものの、皮膚への適切な触覚刺激そのものが持つ生理学的恩恵までが否定されたわけではない。福岡県の筑後市立病院が公開している健康情報レポートや各医療機関の報告によると、適正な摩擦刺激には血行促進と冷え性改善、そして乾布摩擦と自律神経の安定化という無視できない効能が確認されている。
では、免疫力向上の科学的根拠はどこにあるのか。鍵を握るのは、皮膚に広く分布する「C触覚線維(低閾値C線維)」という感覚受容器だ。秒速3〜5センチメートル程度の優しい速度で皮膚を撫でると、この受容器が活性化し、脳の島皮質へ信号を送る。これにより「愛情ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンが分泌され、副交感神経が優位になる。副交感神経の働きが活発化することで、末梢血管が拡張して手足の冷えが改善し、白血球のバランスが整って基礎的な免疫監視機能が維持されるのである。
さらに注目すべきは、脳卒中後のリハビリテーションや高齢者施設での健康効果である。脳梗塞リハビリ専門機関(Reviveリハ等)の臨床報告によると、麻痺側の四肢に対して乾布や手袋を用いて優しく擦るアプローチは、「身体失認(自分の手足がどこにあるか認識できなくなる症状)」の回復に有効であることが示されている。皮膚感覚からのフィードバックによって脳内の身体図式(ボディスキーマ)を再構築する役割を果たしており、単なる寒稽古とは次元の異なるメディカルツールとして活用されている。