害虫が部屋に現れた際、ドラッグストアへ走り「とりあえず燻煙剤(くんえんざい)を焚く」という対応を取る家庭が後を絶ちません。しかし、プロの駆除現場では「燻煙剤単体での根絶率は極めて低い」というのが共通認識となっています。
ネット上の情報では「害虫駆除 燻煙剤 おすすめ」といった安易な推奨が散見されますが、燻煙剤の煙やミストが届くのは部屋の露出した空間表面のみです。シバンムシの幼虫や卵は、固く口を閉じた小麦粉の袋の奥深く、段ボールの多層構造の隙間、あるいは畳の芯材の中に深く潜り込んでいます。薬剤の微粒子が届かないシェルターに守られているため、煙を焚いても卵やサナギは生き残り、2〜3週間後に再び羽化して活動を再開します。
また、トコジラミが原因であった場合、中途半端な燻煙処理は事態を致命的に悪化させます。市販燻煙剤の多くに含まれるピレスロイド系薬剤に対して、現代のトコジラミは90%以上が薬剤耐性(スーパートコジラミ)を獲得していると報告されています。耐性を持つ個体は死滅しないばかりか、薬剤の刺激から逃れるために隣室や天井裏、壁の奥深くまで拡散し、結果として被害エリアを家全体へ広げてしまうのです。
燻煙剤はあくまで「露出している成虫の密度を一過性で下げる補助手段」に過ぎず、根本的な解決には巣の物理的排除と生息環境の解体が欠かせません。