まずは、和歌全体の現代語訳と構造を把握しておきましょう。この歌は『百人一首』の第60番、『金葉和歌集』にも収められている平安中期の傑作です。
【和歌本文】
大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
(おおえやま いくののみちの とおければ まだふみもみず あまのはしだて)
【現代語訳】
「(母のいる丹後国へは)大江山を越え、生野を通って行く道が遠いので、私はまだ天の橋立の地を踏んだこともありませんし、母からの手紙(文)もまだ見ていません。」
この歌の最大の特徴は、「京都から丹後国への旅路」という地理的現実と、「母からの手紙は届いていない(=代作など頼んでいない)」という主張を、一首の中に完全に重ね合わせて表現している点にあります。