画材コミュニティやイラスト投稿サイトの知恵袋等で長年議論されているのが、「クルトガはイラストに向いていないのか」という問題です。三菱鉛筆が生み出した「クルトガ」は、書くたびに芯が少しずつ回転して円錐形に尖り続ける画期的な筆記具として世界的大ヒットを記録しました。しかし、デッサンや本格的なイラスト作画の現場では、導入にあたって注意すべき特性が存在します。
結論から整理すると、クルトガイラスト向き不向きの真相は、機構内部に組み込まれた「クルトガエンジン」の物理的挙動に起因しています。この機構は、筆圧を感知してギアを回転させるため、芯が紙面に触れる瞬間に約0.1mm〜0.2mmほどの上下クッション(沈み込み)が発生します。文字を直立に近い角度で「トン、トン」と断続的に筆記する際には恩恵を受けられますが、イラスト特有のストロークでは以下のような現象が起こります。
- 沈み込みによるストロークの遅延感:素早いハッチングや流麗な曲線を引く際、筆圧の立ち上がりに微小なタイムラグが生じ、線の入り・抜きのニュアンスが鈍くなる。
- 芯の斜め減りが生かせない:デッサンではあえて芯の片減りした平らな面を使って柔らかい階調(トーン)を塗る技法を用いますが、自動回転機構によって常に先端が尖るため、面塗りが困難になる。
- 寝かせた角度での回転停止:ペンの傾斜角を寝かせてストロークを描く場合、垂直方向の筆圧がエンジンに伝わりにくくなり、均一な回転が停止するケースがある。
一方で、「精密機械の設計図のような均一な極細輪郭線を、ペンの向きを変えずに描き続けたい」「髪の毛のハイライト周囲に均一な幅の点描を打ち込みたい」といったピンポイントの用途においては、極めて有効な選択肢です。道具の欠陥ではなく、あくまで「文字筆記の最適化」を追求した機構ゆえの適材適所の違いと言えます。