三相交流を学ぶ上で誰もが直面するのが、「スター結線(Y結線)」と「デルタ結線($\Delta$結線)」の違い、そして計算式に必ず登場する「$\sqrt{3} \fallingdotseq 1.732$」の謎です。第二種電気工事士の筆記試験でも合否を分ける重要ポイントとして毎年出題されています。
三相の回路には、コイルそのものにかかる「相電圧・相電流」と、外の電線に現れる「線間電圧・線電流」の2種類が存在します。
- スター結線(Y結線):3本のコイルの一端を1箇所(中性点)にまとめる結線です。電線に流れる「線電流」はコイルに流れる「相電流」とそのまま同じになりますが、「線間電圧」はコイル1個の電圧(相電圧)の$\sqrt{3}$倍に跳ね上がります。位相が120度離れた2つのベクトルを引き算すると、幾何学的に長さが$\sqrt{3}$倍になるためです。
- デルタ結線($\Delta$結線):3本のコイルを三角形に環状接続する結線です。電線同士がコイルの両端に直結しているため「線間電圧」と「相電圧」は等しくなりますが、電線へ合流して流れる「線電流」はコイルを流れる相電流の$\sqrt{3}$倍になります。
日本の配電用柱上変圧器の二次側(低圧200V)は、一般的に「デルタ結線」が採用されています。このデルタ結線において、三相交流電力を求める公式は以下の通りです。
P = √3 × V × I × cosφ [W]
ここで、$P$は消費電力(W)、$V$は線間電圧(V)、$I$は線電流(A)、$\cos\phi$は力率です。例えば、線間電圧200V、力率85%(0.85)の三相モーターが7.5kW(7,500W)の出力を出しているとき、電線に流れる電流$I$は次のように逆算できます。
I = 7500 ÷ (√3 × 200 × 0.85) ≒ 7500 ÷ (1.732 × 200 × 0.85) ≒ 25.5 [A]
もし同じ7.5kWの負荷を単相200V($P = V \times I \times \cos\phi$)で回そうとすれば、電流は約44.1Aも流れてしまいます。三相3線式を採用することで電線に流れる電流を約58%($1 / \sqrt{3}$)に抑えられ、ケーブルの発熱や線路損失($3I^2R$)を劇的に減らせる理由がここにあります。